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心までほぐす ― 自然体で接する大切さ(7/21付)

2011年7月21日
編集部

 その居酒屋は焼き鳥がすごく美味しく、とても気に入っているのだが、フロアのスタッフが慢性的に足りないため、サワーのお代りを注文したくても見当たらず、しばらく空のグラスを片手に持ちながら、きょろきょろと探さなければならない。その時間が少し興醒めとなる。味もよく、少ないスタッフも一生懸命。だから余計に「客商売としてすごくもったいないな」と毎回感じてしまう。あと1人、2人いればせっかくの心地よさが途切れないのにと残念だ。 私自身、客商売以外のアルバイトも経験したが、やはり楽しかったのは人を相手にした仕事だった。多くの人間を観察したいという欲求が、まだ若く、恐ろしく経験不足だった自分の中にあったのだろうと思う。
 居酒屋で働いていたときは、カウンターに1人で座り、ビールの中瓶と冷奴、冷やしトマトを求める中年男の姿が人生勉強になった。肩の力を抜き、差し向いの板長と言葉少なに会話を交わし、ざわめきの中で時間を過ごす。その客はよく来ていたから、きっとその居酒屋は居心地が良かったのだろう。
 その頃は、下北沢の居酒屋で夜の11時まで働き、そのまま新宿のバーに行き、始発電車の時刻まで1人で飲んでいた。スコッチのオン・ザ・ロックばかりを飲んでいたから、歌舞伎町付近でしばしば吐いた。そこのバーテンダーが私の中で今でも接客の一つの基準となっている。12席程のカウンターだったが、見ていないようですべての客のグラスの状態、灰皿の中、体調まで把握していた。
 その後、別の店でやたらとしゃべりかけたり、不自然に次の飲み物を勧めるバーテンダーと出会うと興醒めし、二度と行かなくなった。
 少し前、腰を痛めて整形外科の2階のリハビリに通った。そこの白い服を着た整体師の若い男女のスタッフは自然な笑顔で、明るく接してくれる。接客マニュアルなどあるはずもない。相手は客ではなく、患者なのだから。彼らは、本当に相手の心の動きが見えているんだなと感心する。患者の体をほぐすということは、何よりも患者の心をほぐしてあげることが大事なんだと知っており、笑顔の効力、そして自然体で接することの大切さを理解しているのだ。医療現場のコミュニケーション能力が年々高まっているのを感じる。

(編集長・増田 剛)

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