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中韓以外にもマイナス拡大、ハワイのみ力強い伸び

2013年9月1日
編集部

黒須宏志氏

日本交通公社 海旅動向シンポ

 日本交通公社は7月17日、東京都内で「第18回海外旅行動向シンポジウム」を開き、第1部では日本交通公社主席研究員の黒須宏志氏が「2012―2013・海外旅行マーケットの現状と今後の展望」と題し、海外市場について解説した。

 13年の旅行市場は引き続き堅調で、国内旅行は景況感の改善から旅行意欲がさらに上昇すると見通した一方で、海旅市場は中韓の回復への兆しが見えないだけでなく、中韓以外にもマイナスが拡大していると報告した。黒須氏は、海旅の減速要因は不透明としながらも、「外部環境が改善すれば海旅の需要回復は期待できる」と予測した。

 12年の海外市場は、旅行者数が過去最高人数の1849万人と記録を更新。9月以降には中韓の大幅な減少があったが、その他の方面は好調で、合計旅行者数はプラスに寄与した。また、(1)震災以降の旅行全体に対する意欲の高まり(2)海旅リピーターの増加(3)羽田国際化による供給量拡大(4)アウトバウンド座席の取りやすさ(インバウンド需要の弱さの反動)――などいくつかの条件も重なり、過去最高人数の結果となった。これらの要因から、昨年時点では13年の海旅市場に悲観的な見方はなく、中韓の減少についても一過性であり、環境が改善すれば需要も回復すると判断していた。

 しかし、13年に入ってからも中韓は回復せず、逆にその他の方面の寄与度まで大幅に縮小した。黒須氏は、「その他の方面が12年度と同じ伸び率を維持していれば、中韓のマイナスは減殺されていた。サーズ(SARS)や9・11のときのような『海外へ行くこと自体が危ない』という考えで旅行への意欲が減少したわけではない」と分析し、「中韓の特殊要因がその他の方面に波及したとは考えられない」と述べた。

 13年の海旅の航空座席供給量は、1―6月が前年同期比3・9%増と予測されていたが、現状は1・7%増と圧縮され、昨年ほどの伸びは見られず、航空仕入環境は徐々に厳しくなると予測した。

 アウトバウンド・インバウンドの寄与度は12年9月を境に反転し、現状は、アウトバウンドのマイナスをインバウンドの旅客が埋めるかたちとなっている。

 インバウンド旅客の現状は、韓国・台湾・香港・東南アジア発を中心に予想を大きく上回るペースで回復しているが、需給関係が逼迫するまでには至っていない。今後、アウトバウンドが復調すれば状況は急激に変わると推測された。

 12年9―12月の出国率変化を性年代別でみると、男性のシニア層よりも女性のシニア層の方が減少は大きく、とくに女性の60―64歳は大幅に落ち込んだ。また、13年1―4月の出国率変化では、男性の15―19歳、20―24歳を除いて、全体的にマイナスとなり、海旅市場の低迷が伺える結果となった。

 休暇・観光目的の旅行における短距離方面(北東アジア、東南アジア、グアム・サイパン)と長距離方面(その他)の比率の推移をみると、2004年には完全に長距離方面から短距離方面へと海旅の人気は変わった。

 12年度、13年度の上期・下期の方面別キャパシティ動向をみると、12年度に高い伸びを示していたオセアニアやグアム・サイパンが13年度の上期・下期ともにマイナス。13年度はハワイのみが力強い伸びを見せる結果となり、短距離方面のなかでも人気が分かれた。

 総務省の「消費者動向調査」、内閣府の「景気動向指数」をみると13年1月以降、景況感の推移は上昇し、国民の意識も後追い的ではあるが良い方向に向かっており、13年5月に実施されたJTB総研の「消費者意識」の調査では、「やりたいことを後回しにしない」という回答が約6割と、震災後に消費者の意識が変化したことが表れている。また、JATAのDI値の推移では、国内が久しぶりにプラスとなり人々が旅行へ行きたいという意欲が感じられる結果となった。

 第2部は、パネリストに消費研究科の三浦展氏と三菱総合研究所事業予測情報センター主席研究員の高橋寿夫氏を招き、「これからの団塊世代後のシニア旅行マーケティングを考える」をテーマに講演。つかみどころがないと言われるシニア世代の旅行の今後について考察した。

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