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ネットワークの輪 102会員に広がる、ピンクリボンのお宿ネットワーク第2回総会開く(7月3日、東京都港区・浜松町東京會舘)

2013年7月21日
編集部

第2回ピンクリボンのお宿ネットワーク総会

10月のピンクリボン月間に新冊子発行

畠 ひで子会長

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(略称・リボン宿ネット、会長=畠ひで子・匠のこころ 吉川屋女将、事務局=旅行新聞新社)は7月3日、東京都港区の浜松町東京會舘で第2回総会を開いた。昨年7月に設立以降、ネットワークの輪は広がり、会員数は発足時の倍の102会員となった。今年度は、10月のピンクリボン月間に合わせて「ピンクリボンのお宿」の新冊子を発行するほか、全国の病院や医療関係者、乳がん患者団体と連携し、シンポジウムや勉強会などを行い、理解を深め受け入れ環境を整えていく。

 畠会長は冒頭のあいさつで、「日本人女性の16人に1人が乳がんになるといわれ、毎年約5万人の女性が胸の切除や温存手術を受けている。8割以上の方が回復するが、そのことで旅を諦めるのは残念でならない。今後も宿での快適な環境作りに向けて努力し、業界のみならず広く社会に向けて啓発の輪を拡大していきたい」と意欲を示した。

来賓の長嶋秀孝氏

 また、「匠のこころ 吉川屋」で今年5月に開いた社員対象の勉強会についても報告した。「乳がんについて理解したうえでお客様をもてなすことが大切」と畠会長は、フロントや接客業務のスタッフだけでなく、調理などの裏方スタッフも含め、社員全員の参加にした。「乳がんは女性の病気というイメージが強いが、毎年、2千人の日本人男性が乳がんになっている。男性スタッフはその事実を知ると驚きつつ、より真剣に耳を傾けていた」と会でのようすを話した。さらに、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、自身の乳がん予防のため両乳房切除と再建手術を受けたことを公表した件にも触れ、「日本でも予防手術をする人が増えるかもしれない。乳がんに対して注目される機会になったと思う」と述べた。

 来賓には、日本観光振興協会から長嶋秀孝常務理事と、企画本部の森岡順子広報課長の2氏が出席。長嶋氏は、「日観振のウェブでもリボン宿ネットの取り組みを紹介していきたい。有力な需要層として、各施設は無理のない範囲で受け入れてほしい」と話した。

旅行新聞新社・石井貞徳社長が
開会のあいさつ

 昨年12月に発行した「ピンクリボンのお宿」冊子は現在、会員宿のほか、全国約800カ所の病院で無料配布し、冊子を手にした人から感謝の声が寄せられている。新冊子は、ピンクリボン月間の10月に発行予定だ。

 リボン宿ネットは、ネットワークの拡大をはじめ、乳がんの早期発見につなげるための啓発活動などにも注力していく。

 役員は次の各氏。
【会長】畠ひで子(匠のこころ 吉川屋)【副会長】石井貞德(旅行新聞新社)▽池山紀之(池山メディカルジャパン)【委員】浅野謙一(夕映えの宿 汐美荘)▽松﨑久美子(ふもと旅館)▽中尾徹也(斎藤ホテル)▽清水隆太郎(結びの宿 愛隣館)【監事】西川丈次(観光ビジネスコンサルタンツ)▽湯通堂温(ホテル秀水園)【事務局長】有島誠(旅行新聞新社)【事務局担当】野村一史(同)▽森山聡子(同)

 13年7月12日現在の宿会員は81、団体会員は6、企業会員は11、賛助会員4の合計102。

【交流会で歓談】

お茶とお菓子で交流会

 


 【4旅館が取り組み事例を発表】

総会後に4旅館の事例発表を行った

会場の出席者と意見交換も

渡邉 二郎氏

 事例紹介では、鷹泉閣岩松旅館(宮城県作並温泉)取締役の渡邉二郎氏、湯本旅館(長野県渋温泉)女将の湯本英里氏、ホテルくさかべアルメリア(岐阜県下呂温泉)常務取締役の日下部聡子氏、大正浪漫の宿 京都屋(佐賀県武雄温泉)女将の前田明子氏の4人が各施設の取り組みを発表した。

 鷹泉閣岩松旅館では4月10日、乳がん手術を受けた人と乳がん治療中の女性限定に「全館貸切ピンクリボンデー」を実施した。当日は、女性スタッフのみで接客し、男性スタッフはお客様の目につかない裏方に徹するなど、人員配置にも細かく配慮。婦人科クリニックの女性医師を招いた講演会は、「良かった」との声が多かった反面、「もっと乳がんに絞った話を聞きたかった」との意見があったという。渡邉さんは、「ホームページなどでプラン販売の告知を行ったが、予約は3件のみで、当日は6人のお客様を80人のスタッフで迎えることになった」と結果を報告した。2回目の「全館貸切ピンクリボンデー」は11月13日に実施予定で、講演会には女性医師との対談も行う。

湯本 英里氏

 湯本旅館は、女将の湯本さんが2010年に乳がん患者となったことをきっかけに、毎月第3金曜日を「ピンクリボンの日」に設定。乳がん患者の利用は毎月1組程度だが、女将が湯本旅館のホームページ上で「闘病日記」などを記していることから問い合わせの電話もあるという。「乳がんの方から、渋温泉にある他の施設でも入浴着を着て温泉に入ることは可能かとの問い合わせがあり、その方には『私が責任を持ちますのでぜひお越し下さい』と伝えたところ、渋温泉で9つの温泉を制覇していた」とのエピソードを語った。また、湯本さんが乳がんになってからの旅行経験談では、「温泉の洗い場に高いイスしかなく、鏡に映る自分の体を改めて見るのが悲しかった」と患者目線での感想を述べた。

日下部 聡子氏

 ホテルくさかべアルメリアは、一般客にも入浴着を着ての大浴場利用を理解してもらうため、脱衣所にポスターを掲示。脱衣所では、術後の痕を気にする人の目隠しとして簡易衝立を設置し、タオルは通常よりも多めに用意するなど配慮している。日下部さんは、「高額な出費は難しいので、ポスターは当館の自作です。ポスターを見ていただくことで入浴着への理解や乳がんに対する啓発にもなればと思う」と話した。「リボン宿ネットの講演会で、患者さんから『タオルが多めに用意されているだけでうれしい』と聞いたので、できることから始めた。今年は、食事を見直すことが目標」と語った。

 

前田 明子氏

 京都屋は6月5・19日を「ピンクリボンの日」に設定。館内を女性限定の貸し切りにし、男性大浴場も開放した。夕食は地元の食材で健康メニューの会席料理を提供。プランは、1泊2食付の宿泊プラン、日帰りプラン、講演プランの3つを用意し、5日は講演会とコンサート、茶話会、19日は、ミニ武雄ツアーと蛍鑑賞会を実施した。

 女将の前田さんは、4年前に卵巣腫瘍で左卵巣と子宮の摘出手術を経験し、自身の体には術後の痕も残っている。「個室露天風呂も大浴場の洗い場の間仕切りもない宿ですが、何かできることがあるだろうと思い、ピンクリボンの日を設定した」と話した。「ピンクリボンの日は来客数100人を目標にしたが、5日の宿泊は10人、日帰り32人、講演会70人、19日は宿泊3人、日帰り10人、講演会20人の参加となり、広報とプランニングの力不足を感じた」と述べた。参加者からは、「女性貸切でなければ夫に車で連れてきてもらえたのに」との意見や、「乳がん患者同士で、友達になりたいと思って来たのに参加者が少なくて残念」との声も紹介した。

 事例紹介後は、会場の出席者との意見交換を行った。

 「簡易衝立はとても良いアイデア。さっそく取り入れたい」「リボン宿ネットの活動だけではなく『ピンクリボン』の趣旨も伝える活動や広報も必要ではないか」などの意見があがった。

 また、「宿から病院にピンクリボンプランのDMを送ってもいいのか」の質問に、池山紀之副会長(池山メディカルジャパン社長)は、「『ピンクリボンのお宿』冊子を置いている病院は、リボン宿ネットのことを認知しているので、DM発送は構わない」と述べた。

 会員宿の女将からは、「プラン名などに『ピンクリボン』というワードを使えば、乳がん患者のお客様は宿で自らの病について告知することになる。患者さん自身、プラン名などで『ピンクリボン』を使うことに抵抗感はないのだろうか」との意見に湯本さんは、「私自身が乳がん患者であることを隠していない」との理由から、ピンクリボンの名称を使うことに賛成の立場を示した。さらに、「当館がリボン宿ネットの会員と分かるよう、リボン宿ネットの缶バッチを衣服に着けてお客様をお出迎えしている」と話した。

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