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子ども旅行専門の「引率舎」

2012年6月21日
編集部
引率舎社長 岸 幸成氏
引率舎社長 岸 幸成氏

 「子ども専門旅行会社」「子ども旅行制作会社」を謳う「引率舎」(岸幸成社長、東京都葛飾区)は2010年4月に設立された旅行会社。行政機関や学校機関、民間企業、NPO法人などが主催する小・中学生の子供に特化した旅行の企画や制作、運営、引率、観光施設・宿泊施設・観光バスの手配などを行っている。エリアは国内で、得意とするのは体験活動がメインの教育旅行だ。代表の岸幸成氏に事業内容を聞いた。

【飯塚 小牧】

≪“運営力”で大手と勝負、安全第一で価格競争せず≫

 会社の設立から日は浅いが、岸氏の子供旅行の引率経験は15年を超える。中学時代に区主催のリーダー講習会を受講し、高校生で行政主催のキャンプの引率を開始。これらの活動から高校時代には、年に1人しか選ばれないという東京都の「模範青少年」の表彰を受けた経歴も持つ。

 卒業後はフリーのディレクターとして、大手企業、スポーツクラブ主催のキャンプやスキー教室などに携わり、旅行会社勤務の経験も経て、会社を立ち上げた。昨年の実績は、スポーツチームの夏合宿手配が50チームと地区の子供会が20件、スポーツクラブなどが主催する教育旅行の運営委託が7件など。

 岸氏は、現在の教育旅行が抱える問題点として旅行会社間の価格競争をあげる。「安全と価格の両面は追えない。価格競争は高速ツアーバスの事故のような惨劇を招く恐れがある」と危機感を示す。

 また、教職員が実務のほかに、教育旅行に関する業務をこなす点も、実施面で問題がないとはいえない。

 「引率人数について各教育委員会の定めはあるが、充分ではない。我われが運営すれば、そういう部分も解消される。さらに、旅行先で先生たちが夜、飲酒する行為も問題がある。24時間体制でサポートするため、当社はツアー中の飲酒を禁止している」と語る。

 こういった問題点に対し、同社がアプローチするのが、運営委託事業だ。強みは大手旅行会社には真似できない「運営力」。「安全を第一に考え、価格競争ではなく運営力で付加価値を付けて大手と勝負する」と強調する。また、手配などは取引のある旅行会社に依頼し、運営面のみ同社に委託することも可能だ。

 同社のいう「運営力」は、詳細なプログラムなどに現れる。数時間で何項目にも及ぶ緻密な行程表は同社ならではのもので、それは2回の視察やスタッフとの打ち合わせのなかで何度も見直される。「第1回目の視察前に、これまでの経験からイメージトレーニングで叩き台のプログラムを作成する。イメージというのは、例えば家を建てるのと同じで、玄関をどうするか、リビングは……と想像を膨らませて作っていく。そして現地へ行って、それが可能かどうかを確認し、女性スタッフの同行のもと、隅々まで下見する。現地で関わる人にも会って話を聞くことで、細かい時間の調整ができる」と語る。その緻密さは事前資料や保護者への事前説明会にも反映される。「場面ごとに必要な衣類や、脱いだ衣類をどうするかも考える」というように、事前資料には荷物用のシールを添付して細かく分ける指示をだすなど、忘れ物の防止や現地で子供たちが分かりやすいような工夫を施す。

 これらのことから、昨年実施された行政主催のスキー教室の運営は、参加した子供の88%、保護者の97%が実施後のアンケートで「満足」と回答。とくに、保護者からは「学校でも採用してほしい」「よく考えられた指導で感銘を受けた」など高評価を博した。「運営委託は安全性が高まり、先生の負担は軽減するメリットがある。一方、デメリットは費用が上がってしまうことだが、保護者アンケートから、いいものにはお金を出してくれることが分かった」と自信を見せる。

 今後の課題は、認知度を上げていくことだ。「運営を委託できるということ自体、知らない学校が多い。私や会社の名前は二の次で、“外注できる”という事実を発信したい」と意気込む。認知度向上をはかるため、同社は9月30日まで「詳細プログラムの無料制作」(http://itaku.insotsu.com/ima-una/cp.pdf )を実施中だ。前年度の実績資料などを用意すれば、同社が詳細なプログラムを作成する。制作数は20事業。

 将来的には人材の確保も必要になる。「現在、主業務は1人で行っているので、運営委託は年間24本に限定している。1本3カ月ほど時間がかかるので、質を重視するとこれが限界だ」。しかし、当面は事業拡大よりも「一歩一歩着実に、受託した事業の満足度を上げることが目標」と堅実に語る。

 「なぜ子供に特化するのか聞かれることもある。子供を相手にする方が手間はかかるが、利益が同じならやりがいのある方を選びたい。自分が生き生きとしていなければ、お客様も楽しくないと思う。ただ、1人ではできない。支えてくれるスタッフが多いからできること」と笑顔を見せた。

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