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観光の復興へ、ANTA 二階会長 × 旅行新聞 石井社長

2011年8月22日
編集部

 東日本大震災による被災、さらに福島第一原子力発電所の事故による影響で、東北を中心に日本全体の観光が大打撃を受けている。長年観光業界の発展に携わり、衆議院議員で全国旅行業協会(ANTA)の会長を務める二階俊博氏が、東北観光の復興、さらには日本の観光の将来像について、旅行新聞新社の石井貞徳社長と語り合った。
【伊集院 悟、増田 剛】

◇     ◇

衆議院議員全国旅行業協会会長 二階 俊博 氏
衆議院議員全国旅行業協会会長
二階 俊博 氏

■石井:地震、津波、原発事故の問題と、東日本大震災の影響で、東北を中心とする観光業界が大打撃を受けています。まずは現在の状況についてお話ください。

■二階:今回の震災では地震、津波、原発事故と3つの打撃を受けた。とくに原発事故の影響は大きく、日本を訪れる外国人観光客が激減。観光への大打撃は、被災地である宮城、岩手、福島の東北3県だけにとどまらず、周りの県にも波及し、手の施しようのない状態になっている。諸外国に対し、避難指定区域以外は安全であるということをしっかりと発信しなくてはいけない。全国旅行業協会としても微力ながらできる限りのことをしていきたいです。7月26日に福島の土湯温泉の山水荘で開く韓国の麗水万博の説明会では、万博のカンドンソク委員長一行を招き、福島の各温泉地の代表に現状を語って頂く。全国から参加する全旅の幹部は力を合わせて頑張ることを誓い合います。

■石井:訪日外客数の激減は、観光業界に対して大変大きな打撃です。中国を中心とするインバウンドの現状と今後について、どう見ておられますか?

■二階:中国では、震災後しばらくは原発の波紋があったが、ようやく平常心を取り戻したようで「日本は元気に復活してきた」という認識を持ってくれているようです。

 5月に中国の温家宝首相が日中韓首脳会談のため来日した際に、東北の多くの子供たちを中国に招待したいとおっしゃってくれましたが、これもさっそく8月1日に第1陣の100人が実現する。私もANTAの会長として参加させて頂くことになっている。林幹雄衆議院議員(元国家公安委員長)、観光庁から山田尚義審議官、さらに政治評論家の森田実先生もご一緒頂けます。子供達の将来が楽しみですね。中国は大震災に見舞われた日本の現状に対し、隣国として友好的に積極的に支援の手を差し延べてくれています。

 今回の震災でも再認識したが、観光面ではとくに「日中韓のトライアングル」でしっかりと手を結び連携していかなくてはならない。来年は韓国の麗水で世界博覧会(万博)が開かれます。愛知、上海、麗水と、世界の万博がアジアで集中して開かれるのはアジアにとって大変名誉なことであり、意義は大きい。麗水の万博には日本の観光業界も総力をあげて支援したいと思っている。先日韓国の鄭柄国文化体育観光大臣が来日し、我われも協力を約束している。観光は「のこぎり」のようなもの。のこぎりを使うときは押すだけ引くだけではダメで、押したら引かなくてはいけない。観光も同様で、来てくれと言うばかりではなく、来てもらったらこちらからも出かけて行くべきです。送客で支援することは、必ず日本の観光にとって大きなプラスとなって返ってくるので、全旅協として送客にも力を入れていきたい。

 国同士の交流は、突き詰めれば人の交流から始まる。政治的、経済的な交流が難しくても「観光」から交流することで、そこから堰を切って流れを生み、経済や産業面での交流に発展させることもできます。

 先日、武部勤元自民党幹事長などと離島対策の調査で沖縄の大東島に行って来ました。離島の雄大な風景と温かい島の人々の人情に触れて素晴しい想い出を持つことができました。離島振興には「観光」も有力な手段として力を入れたいと思っています。

「日中韓のトライアングルで」

旅行新聞新社 石井 貞徳 社長
旅行新聞新社
石井 貞徳 社長

■石井:国の事情でスムーズにいかないことも、観光が風穴を開けることもでき、交流の最初の接点に「観光」は最適ですね。

 東北の観光復興への対応についてはいかがでしょうか?

■二階:まずは、風評被害を少しでも防ぐため、イベントなどで福島県産の野菜や食物などを使ってもらえるよう働きかけています。小さいことですが、そういったところからコツコツとやっていくことが大切。あとは、東北への修学旅行のキャンセルが相次いでいるので、修学旅行の東北への誘致にも尽力していきたい。

 先日、ご承知のように岩手の平泉と小笠原諸島がユネスコの世界遺産に登録されました。岩手そして東北地方にとっては大きな朗報。今回の世界遺産登録をいい刺激に、復興への奮起材料としてもらいたい。小笠原では村長の三選が無投票で決まったが、選挙でニ分されることなく、村をあげて一致団結してがんばっていこうという表れと感じました。
 
■石井:復興へ向けては、個人・会社・団体などそれぞれの自助努力だけではどうしても限界があり、国のリーダーシップ、援助も必要だと思います。
 
■二階:みんな途方に暮れるという姿になった。地元の人たちに元気を出してもらうことと、国の責任で復旧をと呼びかけるために杉良太郎さんや伍代夏子さんらにお願いして、ボランティアで東北に出かけて頂いて熱唱してもらった。炎天下に多くのファンが集まった。今回の震災で東北の鉄道などインフラが破壊されてしまった。交通は旅行・観光のシンボルでもあり、動脈です。インフラの早期復旧が東北復興には不可欠。第3次補正予算に向け、被災鉄道に対する国の支援の抜本的な拡充をはかるよう緊急要請を大畠章宏国土交通大臣に提案しました。現行の災害復旧事業費補助制度での国の補助率を4分の1から2分の1以上に大幅に引き上げ、事業者に負担を求めないことなどを実現したい。
 
「観光復興へ国の支援が必要」

■石井:国が危機に面しているときにこそ、力のある政治家の方に動いていただくことが本当に大切だと感じます。観光の復興のためには、旅館とその象徴的な存在である女将の存在が不可欠。東北を元気にするには旅館と女将が元気にならなくてはいけない。そのためには、旅館・ホテルや旅行会社への国からの支援も必要だと思います。
 
■二階:おっしゃる通りで、現状では、体力勝負になってしまっている。体力のないところから脱落してしまうという状況を打破するためにも、国が正面に立って引っ張り、思い切った手を打たなくてはならない。観光という側面だけではなく、広い意味においても、地域や地方を大切に守っていくため、観光庁が手を差し伸べるべきです。

 先日6月17日に、ようやく「津波対策の推進に関する法律」が成立しました。官僚まかせにすることなく、議員立法で進めて昨年の法案提出から1年かかったが、やっと形になった。海岸堤防や避難路などの施設整備のハード対策とともに、迅速・的確な津波情報や、津波避難ビルの指定、津波ハザードマップの作成などソフト面での対策等も積極的に講じていきます。

 政治の一番なすべきことは国民の生命と財産を守ること。そのためには当然、状況に応じた予算も必要となってくる。それを惜しむべきではない。いつのときも、いやこういう状況だからこそ、与党も野党も関係なく、政治がしっかりとしないといけない。
 
■石井:観光業界にとって、本当に大変なときを迎えていますが、これからの日本の観光の将来像について今現在どのようにお考えでしょうか。
 
■二階:観光は過疎の町、過密の町は関係なく、しっかりとその土地の魅力を見つめ、的確な努力をすれば必ず花開きます。その意味では今、過疎対策や離島振興にも着目している。離島には日本の本来の良さがたくさん詰まっており、観光の果たす役割が非常に大きいと思います。

 あとは、この難局を乗り切るためにはオールジャパンでの取り組みが大切。今、ヒマワリキャンペーンを大展開し、ヒマワリの種を10万袋配っています。これは、千葉県香取市の「あたりや農園」という種苗屋さんが、この私たちの運動に賛同されて寄付して頂きました。うれしいことです。感動しましたよ。ヒマワリの花写真コンクールや絵画展等も開催しますが人々の小さな善意を寄せ合って立ち上がりたいですね。ひまわりは放射能を吸い上げてくれるという話もあり、黄色い大きな花を咲かせてくれる。多くの人に勇気を与えてくれます。さらに「小さな幸せ」が花言葉である「菜の花のキャンペーン」も考えています。この夏は全国でヒマワリの黄色い花が咲き誇り、少しでも皆さんの元気につながればうれしい。来年は全国から集まったヒマワリの種をみんなで福島に植えにいきたいですね。次の「菜の花」大キャンペーンに続けていきたいと思っています。協力下さる人々の土壌はできつつあります。

対談は7月13日、衆議院第2議員会館で行われた
対談は7月13日、衆議院第2議員会館で行われた

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