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量と質、中華系OTAの衝撃 世界標準を日本でも (Ctrip)

2018年6月29日
編集部:謝 谷楓

2018年6月29日(金) 配信

Ctripグループ事務事業部 副総裁 ビクター・ゼン氏インタビュー

インタビューに応じた吉原氏(左)とゼン(Tseng)氏

中国最大手OTA(オンライン旅行会社)Ctrip(シートリップ)が日本展開を加速させている。グループ事業を統括するビクター・ゼン(Victor Tseng、曾怀亿)氏と、国内マーケティング責任者の吉原聖豪氏に話を聞いた。同社はOTAながら、7千ものリアル店舗を有する。【謝 谷楓】

□ポータルサイトと見間違う予約アプリ

 爆買いは影を潜めたが、訪日中国人旅行者数は未だ増加傾向にある。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、5月までの累計来訪者数は約330万人。前年同期と比べ20%以上伸長し、全体の4分の1に及ぶ。インバウンド消費額の指標〈外国人観光客売上・来店動向【速報】〉を見ると1、2月の免税総売上高は前年同月比プラス30%。3月以降は同50%増に迫る勢いが続く。免税カウンターの国・エリア別来店者数のトップも中国人旅行者が占める。事業者にとって、中国人旅行者は依然無視できない存在なのだ。

 消費浴旺盛な中国人旅行者の訪日需要に応えてきたのが、Ctripだ。創業は99年、03年には米国・NASDAQに上場し、時価総額は約2・5兆円。昨年11月に国際ブランド(Trip.com)を立ち上げ、日本を含む13カ国で本格的なグローバル展開を開始。会員数は世界で3億人を超える。

 同社の強みは、提供するスマートフォン端末用予約アプリ(Ctrip)1つで航空券から宿、レンタカー、飲食店、アクティビティまでワンストップで予約手配ができること。口コミ情報も豊富。レビューを読み、日本に行きたいと思い立てばすぐ、予約に進める。

 アプリは総合ポータルサイトと見間違うほど内容が充実している。訪日中国人旅行者の3割が、Ctrip経由とされているが、このアプリを目の当たりにすると頷かざるを得ない。旅行や飲食、SNS(交流サイト)など、さまざまなジャンルのサイトや機能が1つのアプリにまとめられ、ウェブブラウザなどを開く理由が見当たらないのだ。「移民サービス」という海外移住を支援するカテゴリまである。

 高い技術力を持つCtrip。真骨頂はアプリ以外にもあるという。

□7千のリアル店舗を運営

 今回インタビューに応じた、Ctripで各グループ事業を統括するビクター・ゼン(Victor Tseng)副総裁(Corporate Affairs VP)は、こう語る。

 「Ctripは、中国全土で7千のリアル店舗をフランチャイズ展開している。アプリでは、富裕層の多いFIT(個人旅行客)をターゲットに、店舗では一般ユーザー向けのパッケージツアー(団体旅行)販売に注力してきた。スタッフの助言を受け、ユーザー自身が備え付けのタブレット端末で購入する」。

 来店者は、アリペイといったモバイル決済で支払いを済ませることができるため、オンライン会員に登録する必要はない。個人情報を取得し、個人旅行を促すなど、リピーターに育てる施策は行っていないのかという問いに対し、ゼン副総裁はこう応じる。

 「意図的ではない。顧客の需要に基づくサービスの提供を心掛けている。店舗でのみ商品を購入する非会員客についても個人情報を取得できるが、あくまでニーズに応えるためのプロモーションに活用するだけだ」。

訪日中国人旅行者の旅行形態の変化(構成比) 「訪日外国人消費動向調査」(観光庁)をもとに、旬刊旅行新聞編集部が作成した

 実際、中国人旅行者の成長は著しい。14年には6割を占めた団体旅行が17年には4割にまで減り、個人旅行と立場が逆転した【グラフ参照】。7千店という膨大なタッチポイントを持つため、同社は意図せずして旅行者の成長に寄与しているのだろう。

□国内旅行会社とも連携

 7千店を運営できる大規模市場は、サービスの質を磨くためにも有効なようだ。同社は24時間の電話対応を取り入れ、キャンセルからクレーム、緊急時対応までさまざまな要望に応えている。6月18日に発生した大阪府北部の地震でも、キャンセルに伴う返金を一手に引き受けた。

 「中国では近年、EC事業を中心にサービスの質的“レボリューション”が起きている。我われもしっかり対応している。万が一の際、ユーザーはCtripにのみ連絡すれば良い。その結果、大手ホテルチェーンともウィンウィンの関係を築いてきた」とゼン副総裁は自信を見せる。

 サービス面で一番驚かされたのは、アプリ内に埋め込まれたSNSの存在だ。旅ナカで困りごとに遭遇した際に質問を投稿でき、不特定多数のユーザーからアドバイスを得られる。東京にあるこのレストランに行きたいが道に迷ったと入力すれば、即座にレスポンスが来る。チャットが、コンシェルジュ機能も兼ねているのだ。

 高品質なサービス提供は、日本展開でも生かされている。国内のマーケティング事業を統括するCtrip Air Ticketing Japanの吉原聖豪代表(GM)は説明する。

 「14年にサイトを開き、国内ユーザー向けのUI改良に励んできた。仕入れは全国にある6支店が担当。本体傘下のメタサーチ・スカイスキャナーでは、ダイレクトブッキングも可能だ。航空券を中心に価格面で強いが、国内でも24時間の電話対応を実現し、旅ナカのサービス品質を高めている」。

 同社は地方への送客にも注力。ローカル地域の中規模旅行会社と連携し、オリジナルプランを中国に売り込んでいる。本土・リアル店舗で販売する団体商品も供給源はここにある。日本政府観光局(JNTO)と連携した東北エリアへの送客計画も進行中だという。

 同社のグローバル従業員数は3万人。需要把握に呼応した技術開発による世界標準のサービスが、日本市場を席巻する日も遠くない。国内外のOTAにとって大きな脅威となりそうだ。

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