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「半宿半X(エックス)」で生き残り

2011年4月26日
編集部

井門 隆夫氏(井門観光研究所代表取締役)

 井門観光研究所代表取締役の井門隆夫氏は3月30日、日本観光旅館連盟東京都支部と東京都ホテル旅館生活衛生同業組合の合同春季研修会で、「5年後に大きく変わる宿泊市場、新事業モデルを考える」について語った。要旨を紹介する。

 宿泊予約サイトに依存する宿は、週末しか売れず単価は下がる一方。被災者向けの1泊3食付き3千―5千円プランが今後、一般観光客向けにもなるかもしれない。ネット宿泊業者の網から抜け出し、単価の高い自社ホームページから予約を取れるように、もっと真剣に考える必要がある。 さらに最近は土・日2連休を取れる人が減り、水・日などの分散休日が増え、宿泊観光旅行に必要な2連休が取りづらい状況で、どうしても0泊2食や日帰り温泉が増える構造が現状だ。

 経営破綻した地方の旅館を安く買い、格安の均一料金でバイキング導入してチェーン店化するLCI(ロー・コスト・イン)では、食材原価率は14%、人件費は22%でFLコスト(食材と人件費)が36%前後。FLコスト55%が常識の旅館業界は太刀打ちできない。また、5年後の2016年以降は65歳以上の人口も増えない。宿泊業など高齢者人口に依存している事業モデルが崩壊する年でもある。LCIも今後5年間で稼ぎ切り、中国などアジア資本に売り払うかもしれない。

 長期にわたり、旅館業を営んでいくには、一つのビジネスモデルに頼らず変化していかなければ生き残れない。どうすればいいか。答えはないが幾つかヒントはある。

 個別の宿18軒が共同で顧客管理や人材の出向まで行う「一の宿倶楽部」というボランタリーチェーンがある。どこかが被災すればグループ内の人材の移動も可能。今や1軒で営業しようとすれば2割の営業減少になるまで成長した。

 長野県の明神館はレンタカー事業の許可を取得して、電気自動車(EV)を導入。排ガス規制の上高地でEVを貸し出し、連泊・滞在客に対応する「半宿半レンタカー業」を実践している。宮城県・東鳴子温泉の「旅館大沼」は高性能スピーカーも販売する「半宿半音」事業と言ってもいい。そのほか「半宿半農」など今後「半宿半X」が生き残りのカギを握る。

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