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「女将のこえ208」中島 ルミ子さん、ホテル黒部(富山県宇奈月温泉)

2018年3月21日(水) 配信

中島ルミ子さん ホテル黒部

旅先の我が家

 全客室から望める黒部渓谷。手が届くような目前に構える山は、冬は凛と白く、春夏はさわやかな緑、秋には赤く染まって出迎えてくれる。緑と赤の季節には、対岸を走るトロッコ電車の乗客と手を振り合う楽しみもある。宇奈月温泉の最上流に建つホテル黒部ならではの光景は、老若男女の思い出となることだろう。

 ルミ子さんの前職は地元のフリーアナウンサー。東京の短大を卒業してUターンし、FMで番組を持ったり、テレビリポーター、結婚式の司会などで活躍していた。

 ターニングポイントは2000年。淡路花博で富山県のPRイベントを行うに当たり、司会者に抜擢されたのだ。その時、観光協会のリーダーとして同行したのが、夫で現社長の勝喜さんだった。花博に向かう観光バスの6時間、初対面の2人の会話は途切れることがなかった。そして、7カ月後に結婚。

 16、13、4歳と3人の息子に恵まれた今も、愛情と尊敬は変わらないどころか高まっているという。笑顔のルミ子さんに、個人的にも大いに学ぶところがあったのだった。

 ルミ子さんは、顧客一人ひとりへの声がけを大切にしてきた。宴会なら必ず全員にあいさつして回る。「うちは『旅先の我が家』がモットーですし、それ以前に、素敵なお客様に出会えてたくさん話せるこの仕事が趣味なんです」と、まったく無理を感じさせない。

 とにかく愛する人と働くこの仕事が大好きで、大女将には「素敵な息子さんに育ててくださってありがとうございます」、夫には「あなたのお陰で大好きな仕事をさせてもらえます」と、折に触れて伝えているという。感謝を言葉にするのは幸せの秘訣の1つだろう。

 今年2月1日、ホテル黒部は世代交代し、勝喜さんは代表取締役社長に、ルミ子さんは若女将から女将になった。社内に向けた就任あいさつでルミ子さんは、「みなさんの心と体の健康を守ります」と宣言した。

 2人は数年前から意識と働き方改革を推進中だ。我が家の家族である全スタッフを信じ、経営計画書をもれなく配布。理念や全員の個人目標を共有し、売上高からお皿一枚の値段まで公開している。実際、お皿の割れる枚数が激減するなど、意識が変わってきているという。

 休館日も増やしており、今年1―3月はそれぞれ7日間、繁忙期を前にした4月は4―13日を休む。

 我が家の母親役として、ルミ子さんは結婚当初から描いてきた「リピーターでいっぱいの宿」をこれからも目指していく。

(ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)

住所:富山県黒部市宇奈月温泉7▽電話:0765-62-1331▽客室数:43室(220人収容)、一人利用可▽創業:1965(昭和40)年▽料金:1泊2食付15,000円~(税別)▽温泉:弱アルカリ単純泉▽大浴場・露天風呂ともに、山と渓谷を望むことができる。地産地消の料理。日帰り入浴・日帰りプランも。

コラムニスト紹介

ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。

 

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