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「日本版DMO」のあり方、「重層的連携」が必要

岡本淳芳氏
岡本淳芳氏

 展示会ブースの空間づくりなどを手掛ける「ムラヤマ」(日下部肇社長)は、経営理念「感動創造」の推進機関として「感動創造研究所」を2008年に設立。主な活動に、日光街道を軸とした広域連携事業「日光歴史街道活性化コンソーシアム」があり、事務局として活動を牽引する。同研究所プロジェクトマネージャーであり、「日光歴史街道活性化コンソーシアム」事務局長を務める岡本淳芳氏に、地域観光活性化の展望や、地域のマネジメントが期待される「日本版DMO」のあり方について聞いた。
【丁田 徹也】

 ――地域の課題は活性化に向けた意識の共有ができていないことだといわれますが。

 住民や関係者間での地域価値の共有なくしては協力体制が構築されず、中長期的な戦略が組めません。イベントや商品開発など単発事業を興すことはできますが、それは一時的なアクションに留まり、ブームが去ればそこで終わりです。

 地域価値を基軸とした取り組みを進めることで、それが地域の誇りを育てます。さらに次世代へも伝わることで、地域活性化には欠かすことのできない「持続性」が担保されるのだと思います。

 ――地域の価値をどのように共有し、それをどう活かすのか。

 私はまず地域の価値を意識・共有してもらうために、「魅力再発見」と銘打ったワークショップを開催しています。

 そのワークショップで地域を歩き、議論を重ねるなかで、当初は「うちの地域には何もない」という後ろ向きな世論でしたが、「あの神社は由緒正しいものだ」「あのお店の商品は子供のころ大好きだった」と、心の奥底に秘めたシビックプライドが呼び覚まされ、地域について関心と誇りを持つようになりました。小さなことからですが、そうした意識が徐々に波及し、地域の意識を変えていき、「地域をよくしたい」というムーブメントにつながっていくのです。

 また、こうしたワークショップを通じ、地域の方々と進めているのが「宿場巡りマップ」の作成です。基本デザインを全宿場で共通とし、宿場を巡る際のユーザビリティを高めるとともに、歌川広重の版画や、ワークショップで決めた地域のテーマカラーや植栽の柄をあしらい、地域性を出しています。

 このマップの良いところは、住民自らが来訪者にお勧めしてくださるところです。地域密着型で作ったからこその効果だと考えています。なお、現在このマップは、「五」の杉戸宿(埼玉県杉戸町)と「六」の幸手宿(埼玉県幸手市)の2宿をリリースしています。いずれは日光街道全21宿を作成し、より多くの方々に日光街道を巡っていただきたいですね。

ワークショップで作成したパンフレットの一部
ワークショップで作成したパンフレットの一部

 ――地域間の連携については。

 それぞれの地域で進む活性化の動きをどう束ねるべきか、行政連携がよいのか、観光協会、商工団体なのか。当然それぞれの組織それぞれに方向性や手法の違い、温度差があります。そうしたなかで生まれる連携は、ややもすれば「公約数的な連携」になりがちなところですが、それを「公倍数的な連携」にシフトさせることが重要です。

 それはすなわち、それぞれの地域に埋もれた資源を、他の地域の資源との相乗効果を戦略的に構築することで、それを広域にわたる「ストーリー」として紡いでいくのです。それには分野の垣根を越え、多面的にアプローチできうる主体が必要です。

 地域の課題と価値を理解し、セクショナリズムに縛られず、スピーディに動くことができる組織――。私は「民間団体」が最も近いと思います。

 各地域の民間団体が、行政や関連諸団体と密に関わりエリアマネジメント組織として機能し、それぞれの地域のエリアマネージャーが協議体を形成し、個々のまちづくりを全体で調和させ、新しい価値を生み出す仕組みを私は「重層的連携」と呼んでいますが、そうした体制づくりが地域間連携に必要だと思います。

 ――地域のマーケティングやマネジメントを先導することが期待される「日本版DMO」に求められることは。

 DMO組織が「新たな価値を創出する」というポジションに立つことが必要です。現在の観光地連携、あるいは観光行政そのものには「連携により新しい価値を創る」視点が希薄に感じますが、地域に眠るさまざまな地域価値を、観光商品としての商品価値に押し上げなければ人を惹きつけるものになりません。

 DMO組織には、地域の持つ可能性と市場が求めるものを的確に認識し、そこから新たな地域価値を創出する機能が求められると考えています。

 ――「日本版DMO」がそうした機能を担ううえで重要なことは何か。

 事業のとりまとめや企画立案、主体間調整など、観光地域づくりを進めるうえではさまざまなポジションが求められます。

 私はコンサルタントとして、日光街道に関わるさまざまな地域プロジェクトに参画し、取り組みを進めています。そのなかで、「志を同じくする人に出会い、人をつなぎ、地域をつなげる」という、まさに接着剤として機能することが、私が果たすべき最大の役割だと考えています。

 「最大の地域資源は『人』だ」といわれます。DMOにおいても、究極的には人材がキーワードになると考えます。地域の人材と巡り会い、新しいムーブメントが興り、それが人を育てて新たな取り組みとして昇華されていく――。そうした好循環を生み出す受け皿こそがこの「日本版DMO」ではないでしょうか。

 ――ありがとうございました。

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