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野口冬人「温泉・山・旅」資料室、観音温泉に15年12月オープン

観音温泉の鈴木和江社長
観音温泉の鈴木和江社長

貴重な蔵書約3000点展示

 静岡県・観音温泉(鈴木和江社長)は15年12月13日、同温泉敷地内の正運館多目的コーナーの一角に、旅行作家・野口冬人氏が約60年にわたり蒐集してきた温泉や山岳、旅行、民俗などの蔵書約3千点を展示する「野口冬人『温泉・山・旅』資料室」をオープンさせた。鈴木社長は「長いお付き合いをさせていただいている野口先生には色々と教わりました。下田の文化をさらに深める一助になればうれしい」と話す。
【増田 剛】

 旅行作家の野口冬人氏の旅や温泉、山岳関係の資料室を観音温泉で開設する構想は3年前から練られていた。

 蔵書は野口氏が約60年をかけて旅と温泉、山などの取材、執筆で蒐集した各種資料3千点余りで、旅行業界の歴史そのものである。とくに長年の取材活動で集められた、年度別に色分けした約50冊に及ぶファイルに貼り込まれた全国の旅館・ホテル・各市町村発行のパンフレットは、その時代の旅行業界の動きを知る貴重な資料だ。

旅行業界の歴史や動きを知ることができる貴重な資料がずらり
旅行業界の歴史や動きを知ることができる貴重な資料がずらり

 観音温泉の鈴木社長は、「父がこの地に温泉を掘ってから、半世紀になります。野口冬人先生と、竹村節子先生がリュックサックを背負って来られたのは、私が娘をおんぶしているころでした。それから、長いお付き合いが始まりました」と振り返る。「私が野口先生の言葉で一番感動したのは、『伊豆急行線は単線で不便でしょう?』と聞いたときに、野口先生は『それが旅なんですよ。利便性は旅ではない』とおっしゃいました。

 その言葉を受けて、旅をして自分を切り替えるのは時間なのだと気づきました。それに加えて、伊豆の空気や豊かな自然を求めて観音温泉に来て下さる方々の思いに私たちは応えていかなければならないと思いました」と語る。「観音温泉はただの山でしたが、野口先生と長いお付き合いをさせていただくなかで、色々と勉強をさせてもらい、ここまで皆さんに愛される旅館になれたと感謝しています」。

 さらに鈴木社長は、「下田は“黒船来航”の地であり、歴史的にも文化豊かな土地。この地にある観音温泉で、野口冬人『温泉・旅・山』資料室を開設することによって、文化をさらに深める一助になれたらうれしいですね」と話す。

 同資料室がオープンした昨年12月13、14日は野口氏も加盟している日本山岳文化学会・文献分科会(中岡久会長)の会合が観音温泉で開かれた。同会は全国の山の図書館や博物館などの探訪を重ね、「岳書のたより」などに10数年にわたり報告や発表を重ねており、各方面から高い評価を受けている。当日は資料室オープンを記念して、野口氏の講演も予定していたが、急きょ体調不良により本人は参加できなかった。

 野口氏は「すべての蔵書は展示できないが、今後機会を見て入れ替えなどをしていきたい」と語り、「このようなかたちで資料館を設置していただいた観音温泉の鈴木社長には大変感謝している」と話している。

日本山岳文化学会・文献分科会の会合(12月13日)
日本山岳文化学会・文献分科会の会合(12月13日)

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