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見るだけでも価値に、9割が外客の“うさぎ博物館”(ウィズバニー)

川岡智之氏(看板うさぎの 雷ちゃんと風ちゃんと)
川岡智之氏(看板うさぎの
雷ちゃんと風ちゃんと)

「うさぎの本当の魅力伝えたい」

 訪日外国人観光客が急伸するなか、日本人には意外に思える場所に観光客が集まっている。東京・浅草の「Theme Park With Bunny浅草店」もその一つ。うさぎと触れ合える施設で、2013年7月にオープンしたが、現在は来店者の9割が外国人観光客。同店に来るのが目的で日本に来日する客もいる。来店数は1日に30―200人、月で2500―4千人。同店を運営するライシーアムジャパン社長の川岡智之氏は「見るだけでも価値がある」と同店を“ミュージアム”と位置づける。
【飯塚 小牧】

 川岡氏は大学卒業後、在学中に務めていたアップルジャパンなどIT業界の人脈を生かし、2011年に会社を創業。事業に邁進するなか、六本木でふとした空き時間に「うさぎ」と検索したところ偶然、うさぎのペットショップが見つかり、一目で魅了されその日のうちにペットとして迎えた。「自分でも、何故『うさぎ』と検索したか今でも分からない。運命としか言いようがない」と笑う。顧客として通ううち、オーナーからコンサルティングを依頼され、実際に自分で運営してみないとノウハウを提供できないと思い、店舗を開業。周囲からは大反対を受け、人も離れていったが資金を借り、ビル一棟ごと「うさぎカフェ」にした。しかし、フタを開けてみると初月から黒字になり、年間売上は約3千万円になった。

 そのころ、川岡氏はイタリアで高級ブランド・サルヴァトーレフェラガモの美術館と出会う。「入館料は約1千円だったが、好きなブランドなので入ると、何万足もの靴が説明もなくズラリと並んでいた。映像も流れていて解説などはなかったが、ブランドストーリーの原点があり、非常に感動した」。この経験から「人は綺麗なうさぎを見るだけでもお金を払う教養があるのでは」と考えた。ちょうど前述のペットショップとの契約が切れたことから、それまでのコンセプトの「Education(教育)」に「Museum(博物館)」を追加。知人からは「ペットショップに行けばタダで見られるのに払うわけない」と言われたが、「ペットショップのうさぎとは違う」「うさぎの本当の魅力を伝えたい」という信念で“うさぎカフェ”から“うさぎ博物館”へと移行した。また、従来の動物カフェは「カフェ」と名前が付いているが、顧客は飲み物を飲みたくて来店するわけではないと感じていたこともある。「当初は飲み物にもこだわり、高価な紅茶を提供していたが、手をつけない人もいた」。現在、入館料は1人1500円。「写真撮り放題・抱っこし放題」だとプラス1500円、個室を借りるとさらにプラス2千円という形態を取っている。

 売上は順調だが、非難を受けることもある。「お金を払わない人ほどクレームになるが、実際に体験していただくと感動していただける。不思議なことに、入場料が500円だと『かわいい』で終わってしまい、ときに『でも見るだけで500円』と言われるが、1千円になると『素晴らしい』と称賛に変わる」。これは料金が高いと、体験をじっくり味わおうと前向きになり話もよく聞くため、満足度が高まるのではないかと分析する。うさぎというと小学校で飼育しているイメージだが、本来は生野菜をあまり与えてはいけないことや、獣医師法にも載っていない動物であることなども学べる。

 また、顧客には自らうさぎを飼う人も多いが、懐かないケースが多く抱けることに感激する。「独自のノウハウをもとに、飼育のアドバイスもする。また、10万円を超える貴重な種類を見られるのも魅力」。

 この価値観は外国人の方が伝わりやすいという。海外からの来客者に批判はまったくなく、ビジネスモデルを褒められることもある。当初は、外国人をターゲットにしたわけではなかったが、土地柄もあり自然に増えていった。それがSNSなどで世界中に広まり、何組もの客が「東京はここに来ることが目的」と訪れる日々だ。「先日もカナダの男性4人組みがYou Tubeで見て来店されたが、当店以外、何も決めずに日本に来たと言っていて驚いた」と話す。海外の人が感動するのは、野生で懐くことがないと思っているうさぎを抱けることや、飼育を禁止されており、うさぎ自体を見たことがないことなど理由は国によってさまざまだが、割合は欧米系の個人旅行が多数だ。

 急増した背景には看板を「うさぎのテーマパーク」と英語表記したことも大きい。「海外の人は日本の看板は分からないと実感した。周りは飲食店だらけなのに、レストランはどこかと聞かれることも多い。当たり前のところにチャンスはある」と自身の経験から呼びかける。

 最新の動向としては、現地オプショナルツアー販売サイトの「VELTRA」と契約し、同サイトでのチケット販売を開始した。また、現在は大手旅行会社との契約の話も順調に進んでいる。こうした状況も踏まえ、今後は訪日外国人観光客向けのインフォメーションセンターを兼ねることも検討する。「自社の売上だけ考えるのではなく、例えば訪日向けのサービスは1カ月無料で置くことなども考えている。旅行者も道などを聞きやすくなると思うので、多くの人に訪れていただきたい」。

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