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産業観光の可能性探る、先進地・燕三条でフォーラム

燕市の鈴木力市長
燕市の鈴木力市長

 全国産業観光フォーラムin燕三条が10月1、2日、新潟県三条市の燕三条地場産業振興センターで開かれた。今回のテーマは「新しい扉を開くものづくりのまち」。開会式では冒頭、燕商工会議所の田野隆夫会頭が「ものづくりの三大産地である燕市・三条市で産業観光の可能性を探っていきたい」と語った。

 主催者あいさつで全国産業観光推進協議会の須田寛副会長は、燕市と三条市の両市が早くから地場産業を活かし、産業観光に取り組んでいることを踏まえ「燕三条は、産業観光の先進地であり、先駆者的存在である。この地で開催できたことをチャンスとし、この会合を、ものづくりを観光資源にすることについて考える場にしたい」と述べた。

 開催地を代表して、同フォーラム実行委員長の鈴木力燕市長は、観光はその地域の“光を観る”ことであると話したうえで「燕三条地域で光輝いているものは、何といっても『産業』。会合を通してさまざまな地域と意見交換を行い、刺激を与え合って、日本全国で産業観光が進展してほしい」と産業観光の未来に期待を込めた。

 続いて日本観光振興協会による産業観光まちづくり大賞表彰式が行われ、愛知県の知多半島観光圏協議会が金賞を受賞した。記念講演では、「燕三条とスノーピーク」というテーマで、スノーピーク代表取締役の山井太氏が講演を行い、講演終了後引き続き山井氏と、中川政七商店13代代表取締役社長の中川淳氏による「作り手の想いを伝える産業観光」をテーマに記念対談が行われた。

 対談終了後は、3つの分科会が行われた。また2日にはエクスカーションが行われ、参加者はタンブラー磨き体験や、鍛治体験など6つのコースに分かれ、燕三条の産業観光の現場を巡った。

 同フォーラムの基調講演参加者数は約700人、分科会参加者数は約360人。次回は大分県日田市で開催予定。

産業をつなぐための工夫、3つの分科会で見る

須田寛氏が総括を述べた
須田寛氏が総括を述べた

 全国産業観光フォーラムで行われた分科会は、3部構成に分かれ、第1分科会は「こうばが扉を開く!~『燕三条 工場の祭典』から見える燕三条の未来~」、第2分科会は「熱き語り手~扉の向こうにいた職人が、いま、その思いを熱く語る~」、第3分科会は「ザ・オープンファクトリーズ~私たちが進めるオープンファクトリー~」をテーマに行われた。

 第1分科会は、日本観光振興協会常務理事・総合調査研究所長の丁野朗氏をコーディネーターに起用。パネラーとしてmethod代表取締役で「燕三条 工場の祭典」イベント全体監修を務める山田遊氏、永塚製作所専務取締役で同祭典実行委員長の能勢直征氏、玉川堂番頭で同祭典副実行委員長の山田立氏の3人が登壇した。

 「燕三条 工場の祭典」は、ものづくりの裏側を知れるイベントとして今年で3回目を迎え、今年は10月1―4日の計4日間行われた。同期間中は普段は閉じられている工場が開き、68工場のうち常に6―8工場を見学でき、工場内ではワークショップも行われた。

第1分科会のようす
第1分科会のようす

 同分科会では、同祭典を今後どのように発展させていくかについて、パネリストの3人が意見を出し合った。イベント全体の監修を行っている山田遊氏は、工場の祭典に訪れる人のほとんどが宿泊をせずに、日帰りで帰ってしまうという課題について「工場を開き、人を開き、町を開くためには〝夜の祭典〟を行うことが重要」とし、昨年までは工場ごとに夜のイベントを開いていたが、今年は三条市の繁華街に隣接する「三条別院」に工場の職人たちが集い、一夜限りの体験型屋台など、燕三条地域を訪れた人が夜も楽しめる工夫を施した。

 実行委員長の能勢氏は山田遊氏の意見を受け、「1年、1年少しずつこの祭典に変化を加えていくことが大事である」とし、4年目を迎えるまでに、より夜の祭典の仕組みづくりを強化することが必要であるとの見解を述べた。

 また、丁野氏から「観光の付加価値と機能性の向上」について問われ、山田立氏は「工場の祭典において、常に工場を開いているところは売りを目的にはしていない。一番の目的は現場を見て、商品を知ってもらうこと」とし、工場を開き、実際に見学してもらうことは、後継者不足に悩む工場にとって人材育成にもつながってくると語った。

 第2分科会は燕市産業史料館主任学芸員の齊藤優介氏がコーディネーターを務め、パネラーとして日野浦刃物工房代表の日野浦司氏、岡村葡萄園経営者で燕三条「畑の朝カフェ」実行委員の岡村直道氏、山崎研磨工業取締役の山崎直子氏の3人が登壇。全国産業観光推進協議会の須田寛副会長がコメンテーターを務めた。

 同分科会では、「工場を見てもらうことで、ものづくりにおけるストーリーをどう伝えるか」が課題として挙げられた。課題の解決法として、自分たちの技術や普段行っている作業をもう一度ルーツから「知り」、地域の風土を知りそれを「伝える」。この2点が工場で働く人々の意識を高め、産業観光の発展につながるとまとめた。

 第3分科会はエイチストーリー代表取締役の加藤はと子氏がコーディネーターを務め、木本硝子代表取締役の木本誠一氏、川島商店代表取締役の川島武雄氏、高岡伝統産業青年会会長の定塚康孝氏がパネラーとして登壇。コメンテーターを倉又製作所代表取締役の倉又清彦氏が務めた。

 同分科会では、燕三条地域が工場の祭典を行う前に、オープンファクトリーを行っている地域の事例から、「ものづくりを通してまちづくりをしよう」をコンセプトに議論を展開した。各パネリストが各々の事例紹介を行っていくなかで、共通認識として「オープンファクトリーでは決して安売りをしない」ことを掲げており、ものができるまでを見学してもらうことで商品の価値を理解してもらい、次世代へと産業をつなぐための工夫が見受けられた。

 最後に総括を行った須田副会長は、産業観光のポイントとして〝心と心の通い合い〟と〝人と人とのつながり〟を挙げ、「近年、観光にコミュニケーションが不足している。何においてもそこに対話が生まれなければ、心のこもった観光とは言えない」とし、対話を通して作り手の想いとユーザーの想いをつなぐことが産業観光の発展に結びつくとまとめた。

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