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旅館の過ごし方を変える!? ― 新スタイルの「浴衣」のデザインを

2015年7月22日
編集部

 花火大会や夏祭りで華やかな浴衣姿を目にすると、日本情緒を感じる。浴衣は夏に似合う。

 旅館に泊まると、浴衣を着る。とくに温泉に入るときには便利だ。風呂上がりは涼しい。

 でも、夕食で膳の奥の皿に手を伸ばすときは不便だ。気を緩めると浴衣の袖が料理の中に入ってしまうし、朝食のビュッフェでも、トレイを持って袖を気にしながら料理を取るのも気を使う。

 就寝時は決まって体中に帯が絡まり、悪夢のような息苦しさに目が覚めてしまう。

 浴衣には、一長一短がある。

 本紙は毎年「浴衣が似合う温泉地」というアンケートを実施している。13回目となる今年は6月21日号で発表し、城崎温泉(兵庫県)が4年ぶりの1位となった。2位の草津温泉(群馬県)、3位の伊香保温泉(群馬県)、4位の下呂温泉(岐阜県)、5位の銀山温泉(山形県)など日本情緒豊かな温泉地が上位を占めた。とくに1位の城崎温泉は、小規模の宿からそのまま浴衣と下駄で、路地を出て散策ができる素晴らしい温泉地だと思う。「ゆめぱ」というデジタル外湯券も導入し、財布を持たずに湯めぐりや買い物もできるようになっている。

 実際自分に置き換えてみると、浴衣姿で温泉街を歩くのはほんの一部の温泉地で多くの場合、浴衣からもう一度着替えてから外に出ることの方が多い。一度温泉に入った後に着替えるのが面倒で、「外の街を歩きたいな」と思っても旅館の中で過ごし、「朝早くに起きたら散歩でもしよう」と諦めてしまうこともある。これでは温泉街にあるレストランや土産物店にはお金が落ちないし、魅力的な街づくりにつながっていかない。

 温泉旅館は、温泉に入ることが主目的の一つであるため、宿泊客が温泉に入った後の過ごし方が温泉地発展の成否を大きく左右する。

 最近、旅館内で本格的なイタリアンレストランなどを展開する宿も現れてきた。その場合、最も問題になるのが、お客の服装である。和食なら違和感がなくても、本格的なフレンチやイタリアンを浴衣姿で食べるのは、どこかしっくりとこない。

 それであるならば、浴衣に執着する必要はないのではないか。温泉旅館で過ごしやすい、まったく新しいスタイルを生みだせばいい。

 例えば、温泉に入るときは従来の浴衣でもいいが、外に出るときや、館内の西洋レストランで食事をするときにはスタイリッシュなデザインのものを宿が用意する。そして、寝る時には安眠できる素材の衣服を考案する。宿や温泉地で滞在客を増やしたいのなら、そのくらいのバリエーションがあってもよい。

 旅館女将も代名詞だった着物姿ではなく、洋服でお出迎えをするところも増えてきた。仲居さんも働きやすい作務衣などに変更している。宿泊客だけは、いつまでも浴衣と下駄のスタイルを貫く。しかし、今時、下駄や草履は履き慣れず歩きづらい。日本旅館が古き文化や伝統を守ることは素晴らしいことだと思う。そして、そのような宿には敬意を表したい。だが、すべての旅館が伝統に縛られる必要はない。新たな「革命」を起こす宿が出てきてもいいはずだ。浴衣の新しいスタイルやデザインという視点を突破口にして、今の旅館の過ごし方を根底から覆す発想の大転換を期待したい。

(編集長・増田 剛)

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