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宿泊業界の「特権」 ― スタッフに旅行しやすい環境創出を

2015年6月21日
編集部

 6月は観光団体の総会シーズンで、日本中を飛び回る旅館・ホテルの経営者や、支配人などに出会う。昼間の総会が終わると、温泉旅館の大宴会場に浴衣姿で数百人規模が集う懇親会が始まるのだが、隣に座った人とは「今晩で3日連続の宴会で、さすがに疲れたよ」「今週はずっと総会続きで、明日は○○温泉に移動です」というような会話があちこちで交わされる。

 地方の温泉地で総会が行われることで、旅行会社や、案内所の営業担当者は現地の視察になるし、浴衣を着ての懇親会で杯を酌み交わせば、東京のシティホテルの立食パーティーとはひと味違う深いつながりを築けるといったメリットがある。

 一方、小規模旅館の経営者は、旅行会社などとビジネス上の関係が薄いため、このような宴会に姿を現す機会は少ないが、積極的に老舗名門ホテルや、話題の旅館にプライベートで宿泊し、良い部分を自館に取り入れる熱心な経営者が多い。

 このように、経営者や現場責任者は仕事上、あるいは個人的に、他の旅館・ホテルに泊まる機会は頻繁にあるものだ。

 本紙は毎年、旅館・ホテルの現場で活躍する「もてなしの達人」を表彰し、取材にも行く。取材では、日々接客の現場で気を配っていることや、仕事を通じて一番うれしかったことなどを質問していく。最後に、休日の過ごし方や、趣味などを聞いたりもするが、多くの「もてなしの達人」たちは、想像通り、旅行好きである。

 「職業柄、旅館に泊まっても客室係の接し方や、お部屋の清掃がどうなっているのか気になってしまう」と苦笑いする方がとても多い。「でも、他の旅館に泊まることは、これからの仕事にすごく勉強になります」と口をそろえたように語られる。

 その気持ちはよくわかる。日々、多忙で、さまざまな不安を抱えながら、今の仕事を続けるか、まったく別の仕事に移ろうかと悩むことも多いだろう。そんなとき、たまたま宿泊した初めて訪れた地域の旅館で、額に汗を浮かべて、元気と笑顔いっぱいの若い客室係やフロント係に接したとき、同じ仕事でいきいきと輝いている姿に励まされることもあるだろう。同業で仕事の大変さがわかる分だけ、「実は、私もあなたと同じように旅館で働いているのよ」と話し掛けることもあるかもしれない。

 旅館業界の人手不足が深刻化しているなか、最近、面白いなと思ったのが、宿泊予約経営研究所が運営する宿泊業界人専用の宿泊予約サイト「とまりゃん」だ。

 同サイトは、宿泊業界で働くスタッフ(派遣、アルバイト、パートを含む)なら誰でも会員登録が可能で、全国276軒(6月16日現在)の宿泊施設を最大約40%オフで宿泊できる。家族や恋人、友人など同行者も割引の対象となる。加盟する宿泊施設にとっても、平日中心の宿泊プランとして有効に活用できるメリットがある。志の高い若い厨房スタッフなども、どんどん同サイトを活用し、話題となっている全国の旅館の料理を食べ歩かれるといいと思う。

 「特権」という言葉がある。外部の人には羨ましく響く。一部立場の強い人たちが税金を悪用する「特権」はよろしくないが、宿泊業界が協力し合って、大切なスタッフに旅行しやすい環境を創り出す「特権」は大歓迎だ。

(編集長・増田 剛)

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