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旅館業界の人手不足 ― 「人的サービス」の価値は高いもの

2015年5月20日
編集部

 旅館業界では、人手不足が深刻化している。少子化によって、今後さらに若年層の激しい奪い合いが予想されるなか、先見性のある企業や業界では、すでに10―20代の人材の大量採用を始めていると聞く。一方、旅館業界では「どうせ旅館には人が集まらない」と諦めに似た空気も流れ始めている。

 観光庁はこのような事態を真剣に捉え、大規模無料オンライン講座で「旅館経営教室」をスタートさせた。少子高齢化や過疎化など、人口収縮が著しい地方経済の活性化という観点から、現場運営の生産性向上が不可欠であり、お客様により支持される品質サービスをより効率的に提供できる業界へと導いていこうとしている。講師には、サービス工学研究の第一人者で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が務める。内藤氏は本紙でも「いい旅館にしよう!」対談シリーズや「旅館経営教室」シリーズにもご登場いただき、旅館経営者に向けてさまざまな提案をしている。

 今号1面で全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の佐藤信幸会長、北原茂樹次期会長も、人手不足の問題を旅館業の大きな課題として挙げている。

 サービス業に人が集まらない理由はたくさんある。低賃金や長時間勤務、休日が取りづらいなどのイメージがつき、慢性的な人手不足の状態にある。とりわけ旅館はその代表格でもある。サービス産業はこれからも日本の重大な産業であるにも関わらず、すでに「お客はいるのに、人手不足で対応できない」という事態も起こっている。

 これらを解消する根底として、まず現場の生産性を上げる取り組みが第一であるが、「誰にでも働きやすい」環境づくりに取り組むことも急務である。都道府県旅館組合や、観光協会が託児所などを共同出資して設立するなど環境を整備し、「働きやすい観光業界」としてのイメージアップへのPR活動も考えていかなければならない。

 サービス業界の現場は悲鳴を上げている。レストランに入っても前の客が食べ散らかしたままのテーブルや、注文しようと思ってもスタッフが少な過ぎてホールに見当たらないということも、もう慣れっこである。

 その一方で「しっかりとしたサービスを受けたい」という要望も強まっている。例えば、富裕層と言われる外国人観光客が日本を代表するような旅館を選んで宿泊する際には、値段は多少高くても日本文化の「おもてなし」を堪能したいはずだ。

 ハウステンボスが“ロボットホテル”を運営することが話題になっている。フロントにリアルな人型ロボットを配置させたり、清掃をロボットに任せる。すでにビジネスホテルでも機械でチャックイン/アウトを行う施設もあり、格安ならば「それで構わない」と感じる利用者も多い。一方、「人的なサービスがなければ味気ない」と感じる宿泊客もいる。ならば、オプションで「人的なサービス」を提供するシステムやプランを提供することも一案である。

 介護サービス業界と同様に、人手不足が深刻な旅館業界は、ロボットで代用できるサービスはロボット化し、「人的サービスがいかに価値の高いものか」をもっと知らしめることも必要だ。北原次期会長は「全旅連が大学の工学部と連携してサービスのロボット化の研究も」と話されていたが、面白い試みだと思う。

(編集長・増田 剛)

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