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新たな観光ルート ― 離島を含めた瀬戸内海は可能性大

2015年4月21日
編集部

 いわゆるゴールデンルートと呼ばれる東京―大阪間の観光ルートだけでなく、もっと多様な日本の魅力を楽しめるように、増え続ける外国人観光客に示すことは大事である。3月14日の北陸新幹線金沢開業によって北陸エリアは外国人観光客にも認知度が高まり、実際多くの観光客でにぎわっていると聞く。書店の旅行情報コーナーに行くと、北陸のガイドブックがズラリと並んでいる。日本海側と太平洋側を結ぶ太い鉄道ルートができたのは、日本の観光活性化の可能性を大きく広げた。また、新幹線だけではなく、日本には街道文化が根付いているので、歴史を掘り起こせば、既存の街道にもたくさんの魅力的なストーリーが埋もれているし、現代人の視点から新たな観光ルートとして甦らすこともそんなに難しくないはずだ。

 日本全国にはさまざまな素晴らしい観光地があるが、瀬戸内海は日本を代表する観光地になれるし、もっと訪日外国人観光客にアピールできると思っている。私が生れた福岡県は、瀬戸内海の西端に位置する。東京に上京してからも帰省する度に瀬戸内海を通るルートで立ち止まって、観光を楽しんだ。そのうちに魅了されていった。

 瀬戸内海にもサイクリングコースとしても有名な「しまなみ海道」という観光ルートがあり、点である島も、橋やフェリーでつながっている。また、今年3月には松江と尾道を2時間30分でつなぐ中国横断自動車道「やまなみ街道」が全線開通し、新たな可能性を感じる。

 最近、広島県の離島・大崎上島と浅からぬ縁ができ、何度も訪れることになった。

 大崎上島には、竹原港からフェリーで30分ほどの距離にあり、瀬戸内海特有の多島美も楽しめる。軍艦島「契島」を横目に眺めながら、自然豊かな島に着く。

 大崎上島には幾つかの民宿やペンションもあるが、ホテル清風館は温泉が湧き、海を眺めながらの露天風呂は、私の理想とする「浦島太郎」のような夢の時間に近づける感覚になる。

 ホテル清風館の朝食のバイキングはすごく地味だ。だけど、これほど心のこもった朝食バイキングも少ない。華やかだが出来合い料理が多い旅館の朝食バイキングとは一線を画している。すべての料理が、手作りの手間を感じられる。

 離島での正しい時間の過ごし方は、やはり魚釣りである。瀬戸内海は波が穏やかなので、私はいつも釣り竿を旅行鞄に入れて行く。瀬戸内海のブルーベルベットを広げたような、滑らかな海面は、釣り人の心を穏やかにさせる。鳥の鳴き声と、漁船の軋む音以外何も音のしない島で、海中の魚たちと心やさしく“お遊び”をしながら日常生活を忘れていける。

 離島には旅人を充分に満足させる宿がたくさんある。隣の大崎下島の御手洗地区は潮待ちの港として栄えた面影が今も残っている。海に面した築200年を超える船宿「なごみ亭」も1日1組限定で、遊郭の情緒を思わせる内装の宿だ。とても食べきれない量の料理が出され、仲居さんたちは夕暮れに宿からすべて消えていく。離島にフェリーで行く旅には不便だからこそ、得られる楽しみもある。利便性の優れた、話題になっている街だけではない。離島や、まだ知られていない土地の埋もれた魅力も発見していかなければならない。

(編集長・増田 剛)

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