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2015年の観光業界 ― 追い風も確実に進む地方の人材不足

2015年1月1日
編集部

 新年あけましておめでとうございます。

 15年の観光業界を展望する前に、14年の大きな流れを確認したい。4月に消費税率が8%に上がった。観光業界では訪日外客数は円安の追い風もあり、1300万人を突破した。年末には衆議院議員選挙があった。現政権の示す世界観に対抗するビジョンを示せない野党に絶望しながら、投票率は52・6%と過去最低。対案なき現状の価値観を国民は選択せざるを得ない状況となった。地域活性化も熱い議論にはならなかった。

 さて、2015年である。JTBがこのほど発表した15年の旅行動向見通しでは、訪日外国人数は前年比13%増の1500万人と飛躍的に伸びるようだ。さらに、海外旅行は同0・4%増の1700万人、国内旅行は同1・0%増の2億9030万人といずれも14年を上回る堅調な動きを予測している。

 今年の主な予定を見ていくと、3月14日に北陸新幹線金沢開業を迎える。そして3月27日には、姫路城大天守保存修理工事が終了し、一般公開が再開される。4月2日から高野山開創1200年記念大法会が5月21日まで、4月5日から長野市の「善光寺御開帳」が5月31日まで開かれる。4月8日には成田空港にLCC専用の第3旅客ターミナルが開業する。9月には19―23日まで暦の上で5連休となる。6年ぶりのシルバーウイークに大きな期待もできそうだ。これらはほんの一部で、このほかにも全国にはさまざまなイベントや、新規航空路線の開設、日韓国交正常化50周年記念行事なども予定されている。

 一方で、14年から続く国際的な問題や危機が解消されたわけではない。東アジアの近隣諸国との軋轢は続いているし、昨年から続くエボラ出血熱の世界的な広がりを阻止する努力も引き続き必要である。また、年末のロシア通貨ルーブルの急落も気になるニュースだ。国内では、全国的な火山活動の活発化の動きがあるほか、地震や台風、ゲリラ豪雨など天災への備えも必要である。

 政治、経済などの国際情勢の変化や災害などに敏感に影響を受ける観光産業だからこそ、やはり15年も安定した社会を願うばかりである。

 長期的に見ると、観光産業は若年層の人材確保が難しくなっていくだろう。昨年、子供の進路説明会に出席したり、求人広告の営業マンや、旅館経営者らと話すなかで、少子高齢化が今後一層進むなか、体力のある企業は、早くも大量に若者を確保する動きが顕在化しているという。一方、地方の旅館では、従業員の確保がさらに難しくなっている状況を何人かの経営者からも耳にした。

 昨年、「日本秘湯を守る会」名誉会長の佐藤好億氏と東洋大学准教授の島川崇氏が本紙で対談し、大学と秘湯の宿が連携して、地域文化や自然環境の保護、人材育成などで協力し合うことで意見が一致した。年末には佐藤氏が同大の大学院生に講演し、その後居酒屋で語り合い、有意義な時間を共有した。

 訪日外国人は順調に行けば、15年に1500万人になるという。今年観光面で追い風となるイベントなどもここで列挙したが、足元では、確実に地方の観光産業の人材不足が進んでいる。数字に隠された、「観光の危機」から目を逸らさず、実直に見つめていかなければならないと思う。

(編集長・増田 剛)

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