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重要性増す「食」 ― 地方創生には農業と観光の連携を

2014年12月1日
編集部

 2014年の訪日外客数が1300万人に届きそうな勢いである。安倍首相も観光による地域活性化の重要性を口にする機会が増え、ようやく日本にとって観光振興が大きな柱であることが、国政でも日常的に話題に上るようになってきた。

 衆議院が11月21日に解散した。前回の約2年前の選挙のときは立候補者から「観光は票にならない」という話をため息交じりに聞いた記憶があるが、今回も同じだろうか。それとも、地方創生がキーワードの一つとなっているなか、面白い切り口で「観光」による地域活性化を本気で語る候補者が現れるだろうか。とにかく、ただでさえせわしない年末に日本中を選挙カーが駆け巡る。内容が薄く、声だけが大きい残念な候補は「アマリ近クニ来ナイデネ」。

 11月の中旬に佐賀県を訪れた。佐賀県には嬉野温泉や武雄温泉、古湯温泉など歴史ある温泉地がたくさんある。唐津焼、有田焼、伊万里焼などやきものも有名だ。それ以外にも、呼子のイカや、佐賀牛、佐賀海苔、竹崎かになどの「食」も、全国の食通を呼び寄せるパワーを持っている。佐賀県はタマネギやアスパラガスなど農産物にも力を入れている。地方創生には、観光と農林水産業との連携がとても大切で不可欠であると思い知った旅でもあった。

 そういえば先日、「旅行業界におけるクレーマーの意義に関する社会学的一考察」(旅行新聞新社発行)などを著した関西学院大学総合政策学部講師の奥野圭太朗さんと雑談をしているときに、「今はドライブが趣味という人は少ない」というような話になった。免許をとりたての20代のころ、バイトをしてはレンタカーでクルマを借りて、行き先などどこでもよく、とにかくドライブをしていたが、あれから20年も過ぎ、単にクルマを運転している時間が好きで趣味だという人は、このご時世、希少生物なのかもしれない。

 お金と時間の余裕があれば、クルマを運転して、海岸線沿いや山の中を走り、海辺の宿に泊まって美味しい魚介を食べ、山の宿で温泉に浸かる日々を送りたいと日々想像している身である。そう考えたときに、農業や水産業に恵まれた土地は旅先として最適だ。日本の「美味しい」を探しに海岸線をドライブしながらゆっくり旅をしたい、と想いを馳せる。先日、「二つのアルプスが見えるまち」長野県の飯島町にも訪れた。リンゴやナシやマスカットが美味しく、フルーツ三昧の旅となった。美味しいフルーツに囲まれる旅も素晴らしいと感じてしまった。ふと思い出したが、佐賀県でも袋一杯に入った甘いみかんが100円とか、150円で売っていた。みかん好きとしては「ここは天国ではないか」と疑ってしまったほどだった。

 中国の食肉工場で期限切れ肉を提供するなど食の問題が話題になった年でもあった。今後食の重要性はさらに増していく。人口が少なく産業も廃れた過疎地はたくさんある。しかし、安易に電力会社を誘致して解決をはかる道を選ばぬ候補者が今こそ必要だと思う。農業や観光は未来の可能性を秘めている。観光業界でいえば旅行会社はもっと農家とも連携を強め、都会の若者と交流できるプランや、新しいグリーンツーリズムが企画されることを期待している。食の素晴らしさを伝え、観光と結び付けるスタイルを発信してほしい。

(編集長・増田 剛)

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