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エボラウイルスが拡大 ― 観光業界もさまざまな状況の想定を

2014年11月1日
編集部

 日本観光振興協会は10月23日に東京都内で「ムスリム観光客おもてなしセミナー」を開いた。当初150人程度の参加を見込んでいたが、会場には約250人が詰めかけた。東南アジアのビザ緩和措置などの影響もあり、日本を訪れるムスリム(イスラム教信仰者)の数は近年急増している。ムスリムにはお祈りの習慣があり、食べ物では豚肉、豚由来の成分はタブーになっている。アルコールにも配慮が必要である。また、戒律を実行する際の厳密さには生まれ育った国や地域、家族の習慣などで個人差がある。現在ムスリムの人口は約16億人。2030年には22億人となり、世界の人口の3、4人に1人はムスリムとなると予想されている。

 ムスリムへの対応だけでなく、インド人の30%、米国や台湾人の10%がベジタリアンとも言われている。セミナーで新横浜ラーメン博物館の中野正博氏が国際交流時代には「さまざまな宗教や思想、アレルギーで困っている人に対応していきたい」と語っていたが、このような動きが国内でも広がりつつあり、すでに取り組んでいる宿泊施設やレストランも多い。

 数年前には、中国人の団体観光客の食についてのセミナーが観光業界で多く開かれていたが、時代が移り変わり、受入側も世の中の動向を敏感に察知し、いち早く対応している。「まずは相手のことを知りたい」と、セミナー会場から溢れるくらい「ムスリム観光客へのおもてなし」を学ぼうとする観光業界の意識の高さを感じた。

 10月15日には、日本専門新聞協会は第67回新聞週間日本専門新聞大会フェスティバルに、ジャーナリストの櫻井よしこ氏を招いて講演会を行った。櫻井氏は「イスラム国」についても言及した。もともとムスリムは穏健であるが、ほんの数%の原理主義者が過激な行動を起こす。櫻井氏によると、イスラム国では、空港での厳密な検査にも感知されない、下着などに浸み込ませ、機内で自爆テロが可能という爆弾を開発していると紹介した。カナダや米国で、テロとみなされる事件が発生している状況を鑑みても、今後テロへの警戒強化は避けられない。

 観光庁の久保成人長官は10月の定例会見で14年の訪日外客数は「1200万人の後半ではないか」と予想した。初めて1千万人を突破した13年から20―30%増との見込みだ。

 しかし、現在、最も緊張感を持って対応しなければならないのがエボラ出血熱の世界的な感染だ。日本は10月24日、厚生労働省が法務省入国管理局に、国際線のある全国の空港30カ所で感染が流行する4カ国からの入国者に対し、水際で国内感染拡大を防御する厳しい措置を取るよう要請した。その直後、リベリアに滞在しロンドンなどを経由して羽田空港に入国した男性が発熱を訴え、エボラウイルス感染の疑いがあるとの報道もあり日本中が騒然となった。

 国際的な大交流時代に突入したことで、プラスの面ばかりではなく「負」の要素の流入が発生するリスクも当然大きくなった。首都圏や関西圏など大都市からエボラ出血熱の感染が広まると、国内で大混乱が生じることが予想される。地方空港から感染した場合にも、近隣地域への影響は大きくなる。国際交流の最前線に立つ観光業界は、最悪のケースも含め、さまざまな状況を想定しておく必要があるだろう。

(編集長・増田 剛)

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