test

「観光革命」地球規模の構造的変化(244) 北京冬季五輪の光と影

2022年3月4日(金) 配信

 コロナ禍の中で北京冬季五輪が行われた。北京は2008年に夏季五輪を開催しており、夏季・冬季を開催した唯一の都市になった。北京冬季五輪には91の国・地域から約3千人の選手が参加した。

 コロナ禍の故に選手・関係者と一般市民が接触しないように厳格なバブル方式が徹底された。雪の少ない乾燥地帯での開催なので「100%人工雪」での開催であった。さらに米英などは人権問題を理由に政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を行い、米中対立を反映する世界分断的な祭典になった。

 幸い日本の若人たちは実力を発揮し、冬季五輪で最多の18個のメダルを獲得し、さまざまな人間ドラマが展開された。スピードスケートの高木美帆選手とジャンプの小林陵侑選手、スノーボードの平野歩夢選手、カーリングのロコ・ソラーレなどの大活躍によって、コロナ禍の長期化で沈滞している日本に元気を与えてくれた。

 大会は閉幕したが、運営面ではルールの曖昧さや不公正な競技判定やドーピング問題などが噴出し、スキャンダラスなオリンピックという批判がなされた。また五輪では国家は本来脇役であるが、長期政権を画策する習近平国家主席は独裁権力を確立するための「政治ショー」として利用したと批判された。

 「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進のためにスポーツを役立てる」という五輪憲章の理念とは裏腹に商業主義に走る国際オリンピック委員会のバッハ会長への批判も高まっている。

 今大会のメダル最終獲得数の一覧表を見ると、アフリカと中南米、中近東、東南アジアなどの国々や地域は1つもメダルを獲得していない。雪がほとんど無い国々や地域とはいえ、冬季五輪は北の裕福な先進諸国のためのスポーツの祭典であることも事実だ。

 26年の冬季五輪はイタリアのミラノ・コルティナ・ダンペッツオで開催される予定で、70年ぶり2度目の開催になる。札幌市は30年に2度目の冬季五輪誘致を目指している。共産党独裁体制の中国とは異なり、札幌での2度目の五輪開催には市民の十分なる理解が必要不可欠になる。

 いつまでも五輪や万国博覧会などの問題だらけのビッグイベントに固執せずに、独自のユニークかつ「未来志向」の地域活性化策を案出すべきであろう。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

いいね・フォローして最新記事をチェック

「「観光革命」地球規模の構造的変化(244) 北京冬季五輪の光と影」への1件のフィードバック

  1. 石森先生の言われる最後の「いつまでも五輪や万国博覧会などの問題だらけのビッグイベントに固執せずに、独自のユニークかつ「未来志向」の地域活性化策を案出すべきであろう。」は大切な指摘と思います。多様性の時代にあって、国という単位と統治が機能しなくなりつつある現在、様々な地域という単位が国家を超えて存在し、自己主張を始めています。とんな中、未来の地球づくりを目指して、地域の自然環境や歴史の上に形成された民族を単位とする共通の芸術や巧み、を誇りあい、地球に住んでいること、地球人であることの誇りを確認し尊重し合う世界の活動開催イベントへとオリンピックも進化させていくことが必要なのではと思いました。

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。