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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(134)フロアスタッフにできる美味しい料理の提供 気づき・機転・共有

2022年3月4日(金) 配信

 

 小さな子供連れの夫婦が食事に来たとき、イスの用意や周りのお客様との席位置を考えて案内するスタッフがいます。提供する水のコップや使うカトラリーなどに配慮する人もいるでしょう。

 お子様向けのメニューを丁寧に説明し、オーダーを厨房に伝えて出来上がった食事をスピーディにテーブルに運ぶ。そこには、日ごろの研修で身に付けた素晴らしい笑顔と身のこなしがあり、とても素敵なことです。さらにクレームになるようなミスがなければ、お客様も満足されるでしょう。

 しかし「次もここで」、あるいは「ここを誰かに紹介したい、紹介せずにはいられない」という気持ちにさせるには、何かが足りない。それは「感動」です。

 ただ単に食事に「感動」を求めるお客様がいるでしょうか。美味しい食事を安く、気持ち良く食べてもらえばまた来てもらえる、という考えの人もいるでしょう。

 しかし、それはお客様の気持ちに委ねただけで、偶然にまかせたビジネスです。私たちサービス業が目指すべき、本来の姿ではないと思います。サービス業の仕事とは、料理はもちろんですが、「人による接客」でリピーターを創造することです。

 当社が主催した「おもてなしセミナー」で、「あなたが感動したサービス」について、参加者から「小さな子供を連れて夫婦で行ったレストラン」での、スタッフの言葉に感動したという話がありました。

 そのスタッフはオーダーを取りに来て「ご注文のお食事はお出しするタイミングを、少しずらしましょうか」と言ったそうです。家族で外食するときは、いつも子供の食事を優先させ、それが一段落して自分たちが食事をするのが当たり前だったのです。

 そのために、美味しい料理も冷めてしまい、それも仕方がないと諦めていたようです。ところがスタッフからの思わぬ提案に驚き、感動されたというのです。

 そこにはスタッフの気づきと機転、それを厨房に伝える勇気と、それを面倒くさいと思わずに実行するシェフたちとのチームプレーの素晴らしさがあります。

 サービスを提供する人が、自分自身の体験からこうした行動を思いつくこともあるでしょう。

 その体験をスタッフ間でシェアできれば、ほかのスタッフも同様の行動ができるかもしれません。

 しかし、そうした体験がなくても、どのような行動を取ればシェフたちが創る料理をより美味しく食べてもらえるかに強い想いを持てば、感動を創り出すことができるのです。こういう店に笑顔があふれ、リピーターが増えるのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

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「「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(134)フロアスタッフにできる美味しい料理の提供 気づき・機転・共有」への1件のフィードバック

  1. あるレストランでの話ですね。心温まるいい話だと思います。このウエィーターさんの機転は私の見解を反映させるとこうなります。まずこのウエイターさんは家庭での様子を想像してこのような行動をとったということですね。このことはどういうことかというと、まず①店は自分たちの働く場所であり、その利潤のうちのいくばくかを給料でもらうところである ②そのためには利潤の上がる方法で店を運営しなければならない ③店内は組織的に運営しなければならない ④そのためには店内の上下関係を尊重し、お互いコミュニケーションを密にしなければならない などということになるでしょうか。
    私が文中で気になったのは厨房スタッフへの表現です。どこのレストランでもシェフへの気の使いようは大変なものです。ここでも「厨房に伝える勇気」とか「シェフたちが創る料理をより美味しく食べてもらえるか」などの記述からうかがえます。しかし最も気を使わなければならないのは厨房の前にお客様でしょう。

    私は全ての仕事は人のためにあると考えます。飲食店は勿論のこと、病院、タクシー、市役所ets。人は自分の職場のことを「うちの会社は…」などと呼びます。イイエチガイマス。これはあなたの会社ではありません、そこを利用する人のためのものです。例をあげます。レストランならケータリングのように考えてください。食材やカトラリー、そしてテーブルやテーブルクロスなどを運びます。そして利用者の家へ行き調理し、サービスし、そして片付けて帰ってくる・・。病院も同じ。病気の人がいるお宅に行って治療をして帰ってくる。このように逆転の発想で考えるとわかりやすい。つい「うちの会社は」などと言っていると、会社の額縁に飾ってある「お客様のために・・・」などの文言が白々しく思えます。

    私はホスピタリティの定義の一つとして「A+4K」ということばを提案しています。 つまり(A)安全→(K)効率→(K)快適→(K)感動→(K)拡散 です。この中で大切なのは最後の拡散です。自分が感動したことを次の誰かに伝えていくことです。これで世の中幸せなサークルでつながります。このことは西川さんが実践されていることですね。これからも頑張ってください。

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