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「観光革命」地球規模の構造的変化(243) ホテルの栄枯盛衰

2022年2月1日(火) 配信

 オミクロン禍によって重苦しい初春を迎えている。とくに観光・旅行業界はコロナ禍の長期化で極めて深刻な打撃を受けている。

 1月25日(火)の報道では、北海道の老舗企業カラカミホテルズアンドリゾート(札幌)が洞爺湖温泉のホテル「洞爺サンパレスリゾート&スパ(1978年開業、324室)」と「ザ・レイクスイート湖の栖(2019年開業、80室)を3月末に東京都の不動産関連会社に売却するとのこと。カラカミは1953年に唐神呉服店として創業し、65年に「ニュー阿寒ホテル」を開業し、宿泊業に参入した。

 当初「カラカミ観光」の名称で大型施設と低価格路線で成長し、95年に道内観光業で唯一の上場を果たした。その後、業績低迷で2021年4月には札幌・定山渓温泉の「定山渓ビューホテル(647室)」を通販大手のベルーナに売却し、ニュー阿寒ホテルも売却を検討している。

 一方、1月20日(木)の報道では、北海道旅客鉄道(JR北海道)は米国のホテルチェーン大手マリオット・インターナショナルと提携し、23年に着工する札幌駅南口の再開発ビルに、マリオット最上級ブランドのホテルを開業すると発表している。30年に予定される北海道新幹線札幌延伸や冬季五輪招致活動などを見据えて、国際都市機能の充実と富裕層の受け入れ強化をはかろうとしている。

 マリオット・インターナショナルは全世界で7900以上の宿泊施設を運営し、特典会員は全世界で約1億5千万人。既に北海道では「東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブ」や「ウェスティンルスツリゾート」など6カ所を運営。

 まさに北海道でも「ホテルの栄枯盛衰」が顕著に生じているが、現実には新年早々の報道では「札幌市内の宿泊施設などが人手の確保に苦慮している」と報じられている。コロナ禍の深刻化でホテルなどに勤めていた人が職を失い、他業種に転職したために観光業の人手不足が深刻化している。また観光人財を育成する専門学校でも入学希望者が減少しているために、コロナ禍が収束しても、観光分野の人手不足のために十分なサービスを提供できない危惧が生じている。

 観光・旅行業界は長期的な視野で「人への投資」を真剣にはかり、優秀な人財の育成・確保に努める必要がある。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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