test

【熊本県・人吉温泉 清流山水花あゆの里 有村政代女将インタビュー】昨年7月豪雨災害から復興 8月に旅館再開 さくら会も全員で復興活動

2021年12月3日
九州支局:有島 誠

2021年12月3日(金)配信

有村政代女将

 昨年7月の集中豪雨で大きな被害を受けた熊本県・人吉温泉の旅館「清流山水花あゆの里」(有村充広社長)が、1年余りをかけた復旧・改装工事を完了して、8月30日にグランドオープンした。女将の有村政代さんは、被災時に陣頭指揮して100人の宿泊客全員を無事に避難誘導した。旅館の復活と合わせ、被災した温泉地の旅館を励ましながら、女将の会「さくら会」会長として人吉温泉復興に向け精力的に活動を続ける。有村さんに宿再建への道のりと女将会の活動など聞いた。

【九州支局 有島 誠】

8月30日にリニューアルーオープンした清流山水花あゆの里

宿泊客100人無事に避難誘導

 ――まず、災害時の状況と宿泊客の避難誘導は。

 被災した昨年の7月4日前日は「SLひとよし号」の運転初日で、旅館には約100人が宿泊されていました。3日は雨も小康状態でしたが、4日の午前4時ごろに豪雨災害の警報サイレンが鳴り、5時ごろに急いで旅館に向かいました。道路は冠水し、球磨川も洪水となっていました。
 すぐ緊急事態に備え前泊させた社員を集め、宿泊客の避難誘導など対応させました。1階ラウンジにいたお客様は、2階に誘導しました。8時30分ごろに、川に面したラウンジの全面ガラスの一部が大量の水で割れて、泥水が館内に一気に流れ込み、本当に危機一髪でした。その後、お客様全員を確認し、安全な上階の客室に案内しました。

豪雨でラウンジは泥水に覆われた

 ――旅館の被害状況は。

 ラウンジは厚さ20㍉の強化ガラスでしたが、水の力は凄まじいものでした。あっという間に1階の天井まで浸水し、ロビー・ラウンジや事務所、売店、料亭、結婚式場と地階の浴場、ワインセラー、焼酎蔵、機械室などすべて浸かりました。駐車場の車も、宿泊客、社用の約40台が流され、被害を受けました。

 ――宿泊客の対応は。

 旅館は停電で水道もダメだったのですが、何とか水は確保し、調理場が緊急事態のガスで米を炊き、冷蔵庫の食材を使って料理を作り、朝食をお出ししました。エレベーターが使えないので、スタッフ全員で非常階段を利用して、各お部屋に朝食を懐中電灯や水と一緒にお届けしました。
 食事は4日の朝昼夜、5日の朝昼と5回です。お客様からは「こんなときに旅館の料理が食べられると思わなかった」と感謝されました。大浴場もメインが3階と5階にあって使用できました。
 5日午後には熊本市内のバス4台をチャーターし、鹿児島空港、熊本市内、新八代駅、宮崎の4方面に、お客様全員を無事にお送りできました。その後、お客様からは300通以上の礼状をいただきました。

 ――被災して感じたことは。

 社員を解雇しなくてよかった。80人ほとんど残ってくれました。おかげで復旧に向けて館内の泥出しや清掃はもちろん、講師を招いた研修でレベルアップもできました。
 また、ボランティアの方々の復旧支援や全国の旅館・女将会などから、たくさんの支援・物資もいただきました。本当に有難く、元気と勇気が出ました。

 ――旅館再開への道のりと復活できた思いは。

 再開しない選択はなかった。人吉温泉が真っ暗な状態のなか、灯りを先につけて街の皆さんが前向きな気持ちになってほしい、という思いです。球磨川と共存して、一からのやり直し。開館日には、お客様をお迎えできることの素晴らしさを、改めて感じました。
 旅館の工事は復旧と合わせ、改装も行い一気にグレードアップしました。温泉露天風呂付きのお部屋は9室増設し、全76室のうち21室が露天風呂付きになり、大浴場の混雑も緩和されました。
 料亭も靴のまま入れる個室にして、料理も鮎や黒毛和牛など地元食材を使った和洋中の会席です。天ぷらも目の前で揚げて、豪華列車「ななつ星in九州」で人気の芋グラタンも提供します。
 ほかにも焼酎蔵を併設した焼酎ラウンジや、7階の屋上には人吉を一望する天空のテラスも作りました。エステルームも来春にはオープンします。
 個人客を対象にしたおもてなしでは、チェックインをラウンジに変えました。フリードリンクにして、ゆっくり飲み物を楽しみながら、順番にフロント係が伺います。再開して週末には、9割近いお客様に宿泊いただいています。

 ――最後に女将会の活動をお聞きしたい。 

 人吉温泉女将の会「さくら会」の旅館10軒も被災しましたが、全員が再建を目指しています。女将会の団結はより強くなったと思います。水害で女将会のハッピも流されましたが、私の1枚が残っていたので、支援金で元のハッピと着物を新調しました。
 10月21日には熊本城ホールのイベントで、水害後初めて、全員ハッピ姿でPRしました。12月には与謝野晶子の故郷・堺市に伺い、来年2月14日には、水害で流された晶子ブランドの桜の植樹を人吉駅前で行います。

笑顔で活動する人吉温泉女将の会「さくら会」メンバー

 ――ありがとうございました。温泉地の早い復興を願います。

いいね・フォローして最新記事をチェック

“【熊本県・人吉温泉 清流山水花あゆの里 有村政代女将インタビュー】昨年7月豪雨災害から復興 8月に旅館再開 さくら会も全員で復興活動” への 1 件のフィードバック

  1. 2回ほど利用したホテルが復旧再開していることが今回わかって嬉しいです.
    単なる復旧ではなく、グレードアップしたのもさすがですね。
    また是非泊まりたい。

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。